静岡で創業して七十余年になる関本家具装芸。まるで楽屋にあるようなライト付きのドレッサーや、古材を活用した味のある家具など、「ワクワクを届ける」家具づくりについて、関本雅和さんにお話を伺った

(関本家具装芸 関本雅和さん)

1.関本家具装芸の歴史

家具塗装の家の祖母が、木工職人だった祖父を、家具塗装の職人にしたんです。「そっちの方が面白いから」と。それが、関本家具装芸のはじまりです。1941年のことでした。

当時は、下請けとして家具の塗装をやっていて、自分たちで商品をつくっていたわけではなかったんです。ただ、「下請けのままでは苦しくなる」という意識があったようで、姿見を自分たちでつくって、美容院に売り込みにいきました。当時の美容院にあった鏡は、古風なものばかりで、いまらしい雰囲気の姿見はなかったんです。

(20年前のカタログの写真)

この商品が成功して、全国の問屋から引き合いがくるようになり、自分たちで商品をつくるようになっていきました。明かりがあった方がよいと、ドレッサーにライトをつけはじめたのも、うちが最初です。

木工というと、男社会という感じがしますが、女性の視点も取り入れながら、新しいデザインの家具をつくることに挑戦してきたのが、関本家具装芸なんです。

(ライトが取り付けられた「女優ドレッサー」)

2.関本家具装芸のこだわり

「一生使えるもの」というのを、コンセプトにしています。大量生産の家具と価格競争をしても、意味がありません。お客様と向き合って、大事に使ってもらえるような家具をつくっています。

特に、創業以来てがけてきた塗装には、こだわりがあります。家具の仕上がりに関わる、最後の工程なので。塗装というと、昔は濃い茶色でよかった。でも今は、お客様によってニーズが違ってくるから、様々な色を用意しないといけない。そのために、ニレだけでなく、ナラやオールナットなど、様々な木材を使って、白や水色など、沢山の色を表現できるようにしました。

(水色がきれいに発色するような木材が選ばれている)

塗装は、一見すると簡単にやっているように見えるかもしれませんが、もとの木の色は同じように見えても、1本1本少しずつ違うんです。だから塗料の調合には気を遣って、理想の色を探っています。

(工房にはたくさんの塗料が並んでいる)

大事なのは、「とりあえずやってみる」の精神です。そこから良いものが生まれれば、それを取り入れていく。例えば、SNSがきっかけで、古材を活用して家具をつくる、「ikp」というプロジェクトをはじめました。製材屋さんが、解体した家から出てくる木材とか、面白い材料をたくさん持っていたんです。

その中に、建築現場で職人さんが足場として使っていた板がありました。ペンキや、ワイヤーのサビ跡、節などが、その場所で使われた歴史として刻み込まれていて、新品では絶対に出せない味わいがあったんです。それをひとつひとつ、大変な手間と時間をかけて家具にしていく。そうしてできた家具からは、特別な「ワクワク感」が生まれるんです。

(古材を活用した家具には、ひとつひとつ特別な味わいがある)

お気に入りの家具を毎日使っていると、気持ちがすごくあがってくるんです。自分で選んだ、好きなものに囲まれる満足感。そこから得られるワクワク、そういうものを届けていきたい。そのために、もっと革新的なものをつくっていきたいし、関本家具装芸自身も、変わっていく必要があります。

関本家具装芸の強みは、代々受け継がれてきた、塗装の技術です。最近、鉄だけでできた家具の塗装に挑戦しましたが、塗装といっても、木である必要はないのかもしれません。「塗装」という技術の原点に立ち返るなら、もはや、家具である必要すらない可能性があります。

(工房の壁に描かれたコピー)

これから関本家具装芸がどうなっていくのか、私にも予測はできませんが、お客様に「ワクワクを届ける」存在であり続けるための挑戦を、続けていきたいと思っています。

 

関本家具装芸
・住所:静岡県静岡市駿河区津島町7-11
・Tel:054-281-4741
・HP:https://www.sekimoto.co.jp/
・Instagram:https://www.instagram.com/ikp_sekimoto

(取材 芦澤)